前回の記事では、車種タイプ別の低燃費運転のコツを簡単に説明しました。
今回は実際によくある交通状況において、低燃費運転のコツと、自分だけではなく、もっと広い範囲でエコに貢献する考え方について書いていこうと思います。
普段の通勤シーン
都市部ではあまりないかもしれませんが、地方や郊外の場合、通勤に車を使うことも多いかと思います。まずは日々の通勤時における低燃費運転のコツを見ていきます。
渋滞無く流れている道路
信号での停止はあるものの、スムーズに流れている道路を走行する場合、どういった事に注意するべきでしょうか。 まず車間距離ですが、一般的には前車との車間は2秒以上と言われています。大体、3車身~4車身程度。ですが、これだけでは安全ではあっても、低燃費運転には不十分です。前の車の更に前、「前の車と更にその前の車」の車間が狭い場合は、更にプラス1車身程度空けるほうが良いです。
この「2台前までの車間」内で、速度がなるべく一定になるように心がけます。前走車の多少の速度のバラツキを、車間で吸収するイメージです。速度をあらかじめ○○km/hと決めてしまうと、周囲の流れを乱してしまうかもしれません。
通い慣れた道では、信号の変わるタイミングも分かっているかと思います。歩行者用信号などを見て、そのまま進めるのか、停まるのか、早めに判断して、無駄なアクセルを踏まないようにしたいです。
信号で停車する場合、エンジンブレーキを効かせると共に、ブレーキの踏み始めの遊びを利用して、ブレーキランプを点灯させ、減速の意思を後続車に知らせます。遊び部分は、ランプは点灯しますが、ブレーキは効きません。まずはエンジンブレーキで減速し、停車の際にフットブレーキをやんわり効かせて停まります。
急な操作をしなくてもいいマージン(車間)を確保していれば、無駄なブレーキを踏んでエネルギーを熱として捨てるようなことも少なくなり、低燃費に繋げることができます。
渋滞にハマったら
普段から渋滞するポイントは、ある程度分かっているかと思います。回避できる別の道があればいいのですが、迂回することによって距離が延びたりしますし、大抵の場合、どこも混んでいることが多いです。 突発的な渋滞でない限り、そのまま抜けるのが良いと思います。数メートルずつ進んでは停まり・・・を繰り返すことが多いですが、ある程度長い距離進めるような車間になってから発進したほうが良いです。特にアイドリングストップのみ装備されている車の場合、エンジン始動と停止を頻繁に繰り返すことになり、スターターの寿命も気になります。
イライラするあまり、細い脇道(抜け道)を利用する人を見かけますが、本人が思っているほどの効果はありません。細く入り組んだ道はアクセル・ブレーキの使用頻度も多く、無駄が多いうえに、電柱などの障害物に車体を擦ってしまう危険もあります。少しばかりのガソリンをケチる、或いは数分短縮するために、板金塗装で数万円出費してしまっては、全く意味がありません。
毎朝渋滞にハマるようなら、10分早く出発してみてください。驚くほどスムーズにその区間を抜けることもできますし、渋滞していたとしても規模は小さいことが多いです。
ドライブ・休日のお出かけシーン
休日、行楽地などに出かけたりする場合、高速道路の利用もあるかと思います。また、峠道や山道など、アップダウンが激しい道、曲がりくねった道、こういった道での低燃費走行について見ていきます。
高速道路を長距離移動する
一般的に高速道路は燃費が稼ぎやすいとされています。信号もなく、一定速度で走れることが大きな要因です。ただし、速度域が高いために、気をつける事も多くあります。
まず、インターチェンジなどから高速道路に合流する方法です。教習所などでは、キックダウンで低速ギアに切り替えて加速するように教わります。キックダウンせずとも、加速車線をいっぱいに使えば、本線のスピードに合うまで加速することもできますが、重要なのは、躊躇わずにアクセルを踏むことです。ここでの加速は高速走行において必要なエネルギーです。燃費を気にしすぎず、適切な加速をしましょう。
車間距離は高速道路でも2秒を目安にします。周囲の車が皆、2秒間隔で走行しているのが理想ですが、ここでも2台前の車間を確認し、狭い場合はその分広く取るようにします。
上り坂の手前や途中には、傾斜を示す標識や、スピード低下注意などの標識があるはずです。上り坂に入る前に若干加速し、登坂中はギヤを落として(ATならODボタンなどを切る)上ります。
上り坂が終われば大抵は下り坂に入ります。下り坂は早めにアクセルを緩め、または離します。それでもトップギヤに入っていれば徐々に加速していくでしょう。そういった場合はギヤを落とし、エンジンブレーキを効かせて下ります。無闇にブレーキを踏むと後続車にもブレーキが連鎖し、遥か後方で渋滞が発生するかもしれません。
高速道路では、一定速運転をどれだけ続けられるかが、燃費に大きく関わってきます。
山道・峠道
曲がりくねってアップダウンの繰り返しの山道や峠道は、低燃費運転には不向きかもしれませんが、ちょっとした工夫で無駄をなくすことができます。覚えておいて頂きたいのは、「上ったら必ず下る」ということです。
上り坂を登る際、エンジンも勢い良く回り、多くの燃料を必要とします。この燃料は目的地に着くために必要な燃料です。アクセルをしっかり踏んで短時間で到着するのと、燃料消費をケチって長時間かかるのとでは、消費するトータルの燃料は殆ど変わらないでしょう。
前の記事でも触れた通り、必要とされるエネルギーは一定だからです。急な上り坂の場合、登坂車線があったりします。非力な軽自動車などで流れに乗れない場合は、登坂車線を活用するのも手です。
帰り道や山を越える際には、上った分だけ必ず下ります。坂の頂上では、そこに着くまでに消費したエネルギーのうち幾らかは「位置エネルギー」に姿を変え、既に持っている状態です。下る際の理想は、その位置エネルギーを無駄にせずに下ることですが、曲がりくねった山道を減速せずに下ることは不可能ですし、直線路でもスピードが出すぎて危険です。エンジンブレーキをフル活用し、車間に余裕をもったうえで、フットブレーキの使用は最小限にとどめます。 カーブを曲がりきっても下り坂が続く場合は、無駄にアクセルを踏まず、ギヤ操作で車速をコントロールしましょう。
周りが見えていますか?
最近のエコカーには大抵「エコランプ」だとか、そういう類のものがついていて、それらが点灯していれば、「エコな走りをしている」と満足できるようです。燃費計がある車では、リッターあたりの走行距離が伸びていくのを見て悦に入ったり、ハイブリッド車では、回生される電力を見てエコを実感している方もいるでしょう。
でもちょっと待って! 後ろに長い車列ができていませんか? 長い車列は車間も詰まり気味になり、「一定速度で走る」という効率の良い運転がしにくくなります。詰まった車間はギクシャクした車の動きを生み、ギクシャクした車の動きは、いつしか渋滞を生みだします。
車は自分以外にも多数走っています。自分の燃費だけを突き詰めて向上させたとしても、それが必ずしも他人の燃費向上に繋がるわけではありません。自分の燃料を多少犠牲にしてでも、周囲の流れをスムーズにさせるような運転が、本当のエコ運転ではないでしょうか?
是非一度、燃費計やエコランプから目を離し、自分の車を客観的に俯瞰し、周囲全体がスムーズでエコな運転になるような、運転技術を目指してみてはいかがでしょうか。
それでは、良きカーライフを!