自動車のフェイルセーフ・フールプルーフは何かが違う?

車の製造機械 コラム
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車の製造機械

私は機械設計のエンジニア(の端くれ)として、工業機械の設計に携わっています。自動車に限らず、様々な機械を設計する上で、フェイルセーフやフールプルーフといった安全設計は重要であり、欠かせないものです。

ですが、普段何気なく使っている車について、エンジニア目線で見たとき、「何かが違うな・・・」と感じることがあります。ここでは、自動車の安全設計について考えてみたいと思います。

フェイルセーフとフールプルーフ

フェイルセーフ、フールプルーフ、一般的には聞き慣れない言葉でしょうか。まずは簡単に用語の説明からしたいと思います。

フェイルセーフ(fail safe)

フェイルセーフ(フェールセーフ、フェイルセイフ、fail safe)はなんらかの装置・システムにおいて、誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に安全側に制御すること。またはそうなるような設計手法で信頼性設計のひとつ。これは装置やシステムは必ず故障するということを前提にしたものである。

wikipediaより引用

機械は必ず故障するもの。機械を扱う人間は必ずミスをするもの。という考えのもと、故障しても(或いは誤操作しても)必ず安全側になるように、設計段階から十分検討する必要があります。

よく、フェイルセーフ「機能」という言葉を目にしますが、「機能」というよりは「考え方」のほうが正解かもしれません。

私の携わっている工業機械においては、機械の故障や人的ミスが発生した場合、必ずその場で「停止」し、動力源を遮断しなければいけません。

フールプルーフ(fool proof)

フェイルセーフと意味合いを混同されがちですが、こちらは人的ミスを根本的に発生させないような設計にするということです。直訳すると「愚か者にも耐えうる」=誰でも使える=馬鹿除け。ということになります。

工業機械においては、危険部位へのアクセスを、物理的に遮断したり、その遮断したモノを外した場合は、危険部位を稼動させないといった設計がなされます。

また、装置の製造段階では、同じようなコネクタが多数ある場合、誤接続防止のため、誤った配線ができないようにするのもフールプルーフと言えます。

自動車のフェイルセーフ

自動車におけるフェイルセーフを調べてみると、工業機械のそれとは少し毛色が違うことがわかります。自動車のエンジンを制御するコンピュータや、確実な制御を司るセンサー類が故障した場合、最低限走行可能な制御モードに移行し、エンジンブローから守るそうです。

これに対して、多くの工業機械では、装置そのものを停止させます。危険度の度合いによっては、動力源を完全に遮断します。故障箇所をリカバリーして、安全が確認できて初めて、再稼動できるようになっています。

自動車の場合は完全にシステムを停止しません。高速道路を走行していて、故障が発生したことを想像すると、ただちに停止させるほうが危険だから、という考えかもしれません。ですが、前述の説明では、人間の安全は守らなくても、エンジンは守る・・・というように聞こえます。

異常が発生したら、自動でハザードランプを点滅させ、動力=エンジンを切り、停止させるのが本来のフェイルセーフではないでしょうか。多種多様な交通網が発達してしまった現在においては、なかなか難しい問題であることはわかりますが。

自動車のフールプルーフ

工業機械を扱う人は、適切な訓練を受けたり、資格がなければ操作できない場合が多いです。自動車でも、運転免許証を所持していなければ運転できません。だからといって、フールプルーフ設計を疎かにしてしまうわけにもいきません。

近年よく見聞きする、アクセルとブレーキの踏み間違い事故。これは自動車最大の欠陥が原因であると、私は考えます。

「車を走らせる」アクセルと「車を停止させる」ブレーキ、本来真逆の機能を持つペダルが隣り合い、更にどちらも右足で操作するというユーザーインターフェイスが一番の問題でしょう。とはいえ、古来からある、慣れ親しんだ配置を今更変えることなどできるはずもなく、今日に至っているのではないでしょうか。

昔はこれらのペダルとともに、クラッチペダルがあったおかげで、重篤な踏み間違い事故は起きませんでした。そう、車を動かすには、必ず両足が必要だったのです。

AT(オートマティックトランスミッション)が実用化される段階で、フールプルーフという安全設計思想でもう少し踏み込んで検討できていれば、こういった事故もなくなっていたかもしれません。

まとめ

自動車の設計も工業機械の設計も、安全設計という視点で見ると共通しています。もしかしたら、私の想像の及ばないところにまで、しっかりしたリスク分析がなされ、フェイルセーフ・フールプルーフという考えのもと、設計されているかもしれません。

ですが、前述した通り、まだ検討の余地がたくさんあることも事実です。様々な交通事情による制約もありますし、様々な人が使用できるように、利便性を高めている事情もあるでしょう。

どんなに安全装備が充実しても、潜在的な危険性は変わりません。人の命に関わる以上、様々な分野の人が徹底的に、過剰すぎるくらいに、安全設計・検討がなされることを切に願います。

それでは、良きカーライフを。