車に限らず、どんな製品にも、「用途」というものがあります。様々な機能を、必要とする部分に、必要なだけ持たせることで、役に立つ製品となるのです。
私の仕事は、工業系の機械設計です。顧客の要求にマッチした機能を、出来るだけ安く(限られたコストで)提供しなければなりません。
仕様を決め、設計が進んでいくにつれ、「あんなこともしたい!」「これも一括でできないか?」と、要求がどんどん膨れ上がっていくことも珍しくありません。
全部入りという響きに騙されやすい
あれもこれも・・・と、一つの製品を完成させるのに、すべて1台の装置で出来上がってしまう!オールインワン! 聞こえがいいですよね。
企画や仕様決めという、開発の初期段階から、様々な部門が集まり、共同で開発を進めていくことを、コンカレントエンジニアリングと言います。
製品開発のプロセスを構成する、いろいろな工程の知見を共有することにより、より良い製品を短期間で開発することができます。
一見、メリットばかりに思えますが、様々な部門の意見が集まるということは、それだけ発散しやすいとも言えます。
挙句、顧客の要求仕様に余計な枝葉がついた、不格好で高額な製品が出来上がってしまうのです。
開発を取り仕切る責任者が、乱雑に伸びた枝葉を切り落としてくれればいいのですが、責任者の軸足がブレまくっていたりすると最悪です。
開発は長期化し、当初は斬新だったアイデアもすぐに陳腐化し、コンカレントエンジニアリングのメリットは全て消し飛んでしまいます。
適材適所
あらゆる製品は、目的・目標を達成するために開発、製造、販売されています。その製品にできること・できないこと、向いていること・不向きなことがあるのは当然です。
車に例えれば、サーキットを速く走るために作られた車が、田んぼのあぜ道も速く走れるか?と言われれば、答えはNOでしょう。
では逆に、田んぼのあぜ道をスイスイと走る軽トラックに、高性能なエンジンや足回りを付けて、サーキットでも速く走れる車を開発しました。あなたは買いますか?
車は趣味という側面も持ち合わせているので、買う人は買うでしょうが、大多数の方には無用の長物。
用途に合った製品だから役に立つし、役に立つから売れるんですね。
機能美
設計者やデザイナーでなければ、あまりイメージできないかもしれませんが、研ぎ澄まされた機能は美しいんです。
有名デザイナーが手掛けた、斬新なデザイン・・・とか、そういう小難しい話ではないのですが、無駄なものをすべてそぎ落とした製品って、美しい・・・というかカッコイイのです。
製品や装置に限らず、一つの部品の一枚の図面に至るまで、俯瞰してみると、カッコイイ・かっこ悪い、ということが感じられます。
カッコイイ製品は機能・性能も高いですが、かっこ悪い製品は、どこかに問題を抱えていることが多いです。
ここで言う「カッコイイ・かっこ悪い」というのは、ちょっとうまく説明できませんが、
- カッコイイ=洗練
- かっこ悪い=雑多
こういうイメージでしょうか。「全部入り」は雑多なんです。
今まさに、雑多な開発をしているので、愚痴っぽくなってしまい、申し訳ございません。
それでは、良きカーライフを。