自動車税重課に物申す!建前はいいから本音を聞きたい

自動車の模型とお金・電卓 コラム
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自動車の模型とお金・電卓

自動車税を気にする季節になってきました。私の愛車は登録から13年を経過し、今年からおおむね15%の重課となります。

この重課、自動車税のグリーン化と言い、新車登録から一定年数を経過した、環境負荷の大きい自動車の税率を重くするものです。 逆に環境負荷の小さいエコカーなどは税率が軽減されます。

環境に配慮した税制というのが建前なようですが、様々な矛盾を感じずにはいられません。

古い車=環境負荷が大きい?

私自身、お世辞にも環境にやさしい車に乗っているとは言えず、むしろかなり環境負荷の大きい車に乗っているという自覚があります。

ここで言う「環境負荷」とは、自動車が生産から使用、廃棄されるまでに放出される汚染物質を、CO2に換算した値です。

値とはいいますが、各社が公表しているLCA(ライフサイクルアセスメント)では、絶対的な数値ではなく、ある比較対象を1としたときの指数で表されるのが一般的なようですが・・・。

ちょっと話が逸れましたが、登録から13年超の車は環境負荷が大きい・・・と一律に語るのは少し乱暴な気がします。

都市部で使用され、大した走行距離も乗られなかったまま13年経過した車と、地方で毎日のように酷使されても年式が新しい車、CO2排出量(換算値)でみれば、後者のほうが環境負荷は大きいのは明白です。

環境負荷の大小で重課・軽課を決めるなら、走行距離などで判断するべきです。

で、走行距離に応じての課税は、すでにガソリン税で課税されています。しかも二重に。(揮発油税と地方道路税)

たしかに年式の古い車は新しい車と比べれば、燃費性能をはじめ、様々な性能が劣っていることは確かですが、だからといってすぐに環境問題に結び付けて重課するのは無理があるのではないかと思います。

LCAで見てみると

自動車メーカー各社は、自動車の材料生産、製造から、使用、廃棄(リサイクル)までの環境負荷を公表しています。

主に棒グラフで、現行ガソリン車を「1」としたとき、対象車種を指数で比較するものです。

トヨタならこんな感じになります。

トヨタのLCA出典:次世代車のライフサイクル環境取り組み(TOYOTA)

これは、自動車の生涯走行距離を10万km(10年)をJC08モードで走行した場合の結果です。

ガソリン車とハイブリッド車で見てみると、違いはほぼ走行時(燃料製造、燃料消費)の差ですね。車両製造と素材製造には、大きな差は見られません。(おいおい、ホントかよ?!とツッコミたくなりますが)

自動車税の重課は13年超ですが、ここでは一旦置いておいて、車の生涯走行距離が10万kmをそのまま信じてハイブリッド車を10年(10万km)ごとに買い替えるのと、ガソリン車を無理やり20年(20万km)乗り続けることを比較してみましょうか。

上のグラフでは、ガソリン車の「走行」部分を2倍にして積み上げたものと、ハイブリッド車の全項目を積み上げたもの、どちらが環境負荷が高くなるでしょうか?

ガソリン車は走行による負荷が約80%を占めていますね。対してハイブリッド車は全ての項目の合計がガソリン車の60%です。

それぞれ倍にして積み上げたとすると、ハイブリッド車に軍配が上がります。ネットなどでは、車を長く乗り続けたほうが、頻繁に買い替えるよりもエコロジーだ!という意見が散見されますが、このグラフをそのまま信じると、そうとも言い切れないですね。

以前にLCAについて記事を書いたときには、ハイブリッド車がここまで優位なデータではなかったのですが、普及して製造段階の環境負荷が低減されたのでしょうかね?

参考:中古車という選択 ライフサイクルアセスメントを考慮した車選び

ここではガソリン車を20万km乗り続けるのと、10万kmごとにハイブリッドカーを乗り換えるという比較なので、それよりも短いスパンで乗り換える場合は、また話が違ってくるかもしれません。

・・・とここまで書いて、前世代のガソリン車とハイブリッド車を比べても意味のないことに気づきました。

そもそもハイブリッドカーは登録から13年を超えても重課にはならないんですよね。

余談ですが、経済性で言えば極端な例を除き、大切に乗り続けるほうがはるかに「エコノミー」ではあります。

環境のために使われる税金なら喜んで支払うよ?

私は好き好んで今の愛車を乗り続けています。言ってみれば趣味の領域です。そういう人にとっては、車は嗜好品以外の何物でもありません。

この15%の重課が、名目通り環境保全のために使われるのなら、喜んで支払います。でも自動車税は地方税です。環境負荷とは全くと言っていいほど関係ありません。

また、世の中には古い年式の中古車しか選択肢がない方もたくさんおられます。

地方は車が生活するうえで必須と言えるほど、公共の交通機関が発達していません。それに加えて賃金の格差で、新車や新しい年式の車を買う余裕のない人も多いです。

中古車という選択も、自動車の製品としての寿命を全うさせるという、一種のエコであるはずなのに、「年式が古いから」イコール「環境負荷が大きい」と、余計に税金をとるのは納得できません。

金銭的に余裕のある人は、短いスパンで新車を取得し、減税のメリットまで享受できます。そこから放出された中古車は、金銭的に困窮している人に渡り、重課の対象となる・・・なにか歪んでいる仕組みだと感じるのは私だけでしょうか。

自動車税重課は自動車買い替え促進税

自動車産業は裾野も広く、日本の経済活動になくてはならない産業です。守っていかなければならないのも理解できます。

エコカー減税と高年式車の重課で、買い替えを促進したいのならば、「環境配慮」なんて建前を持ち出さずに、「買い替え促進税」とでもすればいいのに。

自動車産業の裾野を守るなら、なにも新車を売る必要はありません。

今まで乗っていた車の保守パーツ生産もいいですし、より燃費の良いエンジンに載せ替えられるように設計したり、いくらでもエコで産業の保護になるアイデアはあるはずです。

エコを建前にすれば増税もやむなし・・・という考え方、なんとかならないものでしょうか?

それでは、良きカーライフを。