テクノロジーの進歩により、減少傾向にある交通事故。 一方で「ありえない!」と目や耳を疑うような事故も多く発生しています。 クルマの利便性向上の裏に、使用者が忘れがちな危険性が潜んでいることを、再認識していただきたいと思います。
この記事では、
- クルマの危険性
- テクノロジーの功罪
- 正しくクルマと付き合う為に
について書いていきます。
クルマの危険性
ここで言う”クルマ”とは、主に普通乗用車のことを言います。 よく、「クルマは凶器か?」という議論を目にしますが、そもそも凶器とは?
Wikipediaによれば、
凶器(きょうき、兇器とも)とは、ヒトの生命・身体に危害を与え、殺害や傷害のために用いられる道具の総称。刀剣や銃などのような性質上の凶器と、自動車やチェーンソーなどの用法上の凶器との別がある。
ということらしいです。 クルマは、用法上の凶器ということになっているようです。 使い方を誤れば、凶器になり得る・・・字面を素直に捉えればこういうことでしょうか。
具体的な危険性としては、なにより重量が挙げられます。 多くの四輪車は静止しているだけで、1トン以上の「重さ」という潜在的な危険性を持っています。
これがひとたび動き出せば、「運動エネルギー」へと姿を変えます。 運動エネルギーは重さに比例し、速度の二乗に比例します。
生身の人間は、重さだけでも耐えられないのに、さらに速度がかかればひとたまりもないのは容易に想像できるでしょう。
他にも挙げればキリがないほど、多くの危険性を持つクルマですが、ここでは「十二分な殺傷能力を持つ」ということだけでも認識していただきたいと思います。
テクノロジーの功罪
さて、2016年現在、テクノロジーの進歩により、様々な安全装備や、運転をサポート・アシストする技術が投入され、交通事故は年々減少傾向にあることは、冒頭で述べました。
AT=オートマチックトランスミッションが普及したことにより、誰でも気軽に運転できるようになり、クルマがより身近な存在になりました。
最近では自動ブレーキシステムも普及し、2020年を目途に国家プロジェクトとして、自動運転の実用化も進められています。
こういったテクノロジーの進歩は利便性・安全性の向上に大きく寄与していることは事実ですが、反面、使用者の「意識」の低下を私は非常に危惧しています。
例えばAT
日本国内における、AT車の普及率は実に98%以上と言われています。 ATはクラッチ操作が不要で、特に渋滞時の利便性は大きいです。
一方で、前述した「用法上の凶器」を扱っている・・・と認識しているドライバーは殆どいないのではないでしょうか。
気軽にエンジンをかけ、Dレンジに入れれば車が動き出す。 アクセルを踏み、鼻歌まじりにハンドルきればどこへでも行ける。 そういったお手軽さが、ドライバーから「凶器を扱っている」という意識を低下させているのではないかと思います。
ではMTはどうか?
赤信号で停止している状態から、信号が青に変わり、発進する時を考えてみます。 停止中、クラッチを切って(踏み込んで)いるか、ギアをニュートラルに入れ、クラッチを繋いで(足を離して)いるか、どちらかだと思います。 大抵はギアをニュートラルにし、クラッチから足を離しているでしょう。
信号が青に変わり発進する際、次の手順になります。
- クラッチを踏み込む
- ギアをローに入れる
- ブレーキから足を離す
- 半クラッチ+アクセルを徐々に踏み込む
- クラッチから足を離す
3~5は流れで一瞬の作業ですが、ATがブレーキから足を離すだけで動き出すのに比べて、なんと面倒な作業でしょうか。
ですが、この一連の操作がドライバーに「凶器を扱っている」という自覚を植えつけていると言えるのではないでしょうか。
クルマを発進させる全ての工程において、雑な操作は許容されません。 ドライバーはひとつひとつの操作に意思確認を迫られています。
明確にクルマを動かす意思を持って、尚且つ何段階もの意思確認を経て、やっとクルマは動き出すのです。
ATで煩雑なギア操作を放棄し、自動ブレーキ、クルーズコントロール、各種センサー・レーダー・カメラなどによる予防安全装置、そして自動運転。
テクノロジーの進歩はクルマの利便性・安全性を大きく向上させるものですが、それに頼り、慣れ、それが当たり前のようになってしまうと、使用者はいつしか「凶器になり得る」ということを忘れてしまうでしょう。
正しくクルマと付き合う為に
これから先、テクノロジーの進歩にともなって、もっと便利に、快適に、安全に、クルマを運転できる時代がやってくるでしょう。 しかしクルマは鉄(やアルミ)の塊であることに変わりはありません。
潜在的な危険性はなくなることはないのです。 使用者ひとりひとりが、クルマを「凶器になり得るモノ」と認識し、忘れないことが大切だと思います。
それでは、良きカーライフを!