以前に書いた「アクセル・ブレーキ踏み間違い事故」の記事に、様々なコメントをいただきまして、この普通では考えられないような事故について、改めて考えてみました。
というのも、メディアで報じられている情報のほとんどは、「踏み間違えたこと」で完結していて、状況・背景・ドライバーの心境など、事細かに触れられてはいません。
これでは、「踏み間違わないように注意しましょうね」という答えしか出てきませんし、根本的な解決には至らないと思うのです。
事故当事者は状況を詳しく覚えていない。なぜか?
アクセル・ブレーキ踏み間違い事故を起こした当事者ではないので、あくまで想像ですが、事故当時の状況を詳しく説明できる人なんていないでしょう。
止まろうとして逆に加速したから、パニックになって更にペダルを踏み込むのではないか? ということをよく目にします。
確かにパニックに陥れば、状況を事細かに説明することなんてできませんし、覚えてすらいないでしょう。
では、事故を起こさなかった場合はどうですか? 車でコンビニに行き、買い物を済ませ帰宅する。何事もない日常です。
車に乗り込んでから、帰宅するまで、どういう状況でどんな操作をしたのか? 思い出して詳細に説明できますか?
ほとんどの方はそんなこと気にも留めていないでしょう。なぜなら、運転すること自体、慣れで無意識に行っている操作だからです。
事故の状況を詳しく覚えていないのは、踏み間違ってパニックに陥る以前に、車を運転することに何も感じていないからだと言えます。
運転のルーティン化
車の運転に慣れることは、決して悪いことではありません。 慣れることによって、周囲の状況にも意識を向けることができ、安全運転に繋がるでしょう。
ここで今更ですが、車に乗り込んでから目的地に到着して、車を降りるまでの一連の動作を思い出してみましょう。
- 車の周囲の安全を確認する。
- ドアを開け、乗り込む。
- エンジンをスタートさせる。
- ドアロックし、シートベルト装着。
- ブレーキを踏む。
- ギアを入れる。
- パーキングブレーキ解除。
- 安全確認。
- ブレーキを緩めゆっくり発進。
- アクセルを徐々に踏み加速。
目的地に着き・・・(ここではコンビニとします)
- 駐車スペースを探す。
- ブレーキを踏みつつゆっくり駐車。
- 完全に停まったらギアをパーキングに。
- パーキングブレーキを引く。
- ブレーキを離す。
- エンジンを止める。
- シートベルトを外す。
- ドアを開け降りる。
もしかしたら抜けなどあるかもしれませんが、運転することに慣れると、これら一連の動作・操作を無意識に行っています。
教習所では、車に乗り込む前に、車の周囲や下廻りを確認したりしますが、殆どの方はしていないでしょう。
自分の運転スタイルに合わせ、余計なものは端折り、一連の動作をルーティン化しているのです。
それぞれの動作・操作を、いちいち指差し確認などせずに、「車を動かすこと」「車を止めること」とひとまとめにしています。
ルーティンに組み込んではいけないもの
上記の一連の動作のうち、ルーティンに組み込んではいけないものがあります。お気づきでしょうか?
安全確認などの「確認作業」はルーティンに組み込むべきではありません。
ルーティンとは、決められた一連の動作を指します。 決められた一連の動作は、慣れてくると無意識にできてしまいます。
無意識に行う安全確認など、もはや確認作業ではありません。形式的に見ているだけで、意識を持って注視していないのです。
ルーティンに割り込み処理が発生するとどうなるのか?
並列処理可能なコンピュータならいざ知らず、人間は複数の物事を同時に処理できません。
いや、できる方もいらっしゃるかもしれませんが、頭で考えて身体で処理する運転操作において、できることにも限度があります。
車を運転するというルーティンも、一瞬で処理はできません。操作の過程で何か別の処理が割り込んできた場合、いったいどうなってしまうのでしょうか?
操作の一部がポッカリ抜け落ちてしまう
私のお間抜けな体験談で申し訳ありませんが、一例をご紹介します。
赤信号で停止している車列に追いつきました。ブレーキを踏み減速し、停止寸前でギアをニュートラルにするため、クラッチを踏み、ギアを抜こうとした瞬間、携帯電話が鳴りました。
車が止まり、携帯を取り出し、応答拒否(運転中なので)にしました。そして何を考えたのか(何も考えていなかったのかもしれませんが)クラッチから足を離しました。
そう、ギアが入ったままクラッチを繋いでしまったのです。 もちろん車はエンスト。
いつもなら、シフトレバーを左右に振って、ニュートラルだと確認してからクラッチを離しますが、その一連の流れに、不測の処理が割り込んでしまったことにより、ルーティンがどこで止まっているのかわからなくなってしまいました。
「不注意」と一言で言ってしまえばそれまでですが、恐らく、これと似たようなことが原因で、アクセル・ブレーキ踏み間違い事故は起こるのだと思います。
踏み間違いを起こしにくいペダルの踏み方
人間である以上、残念ながらミスは必ず起こりますし、前述のように運転に慣れれば慣れるほど、そして操作が簡単なほど、踏み間違いのリスクは高まります。
ですが、ミスが起きても安全方向にもっていける方法はあります。それはペダルの踏み方です。
以前にも一度、ペダルの踏み方について記事を書いていますが、簡単におさらいしてみます。
参考:たったこれだけ!車の乗り心地を劇的に向上させるブレーキング術
※注)自分に合わないと思ったらやめてください。自己流なのであくまでも自己責任でお願い致します。 ただし、あくまでもブレーキ優先だということは覚えておいていただければと思います。
ペダル操作の正しい方法
何が正しくて何が間違いか・・・ということは置いておいて、ここでの正しい方法とは、教習所で教わる方法のことを言います。
超簡単に言えば、
- アクセルはかかとを床につけて、つま先側で踏み、足首で強さを調節
- ブレーキはかかとを床につけないで踏み、膝の曲げ伸ばしで強さを調節
です。
私の個人的な意見ですが、これでは右足の位置が定まりませんし、基本的にはアクセルの手前に足がくるようになると思います。
足の位置が定まらなければ、ペダルの位置も把握しにくく、アクセルの手前に足がくることが多いので、咄嗟に踏み込んでしまうのは、アクセルということになりかねません。
踏み間違いを起こしにくい方法(自己流)
以前の記事で詳しく触れていますので、ここでは簡単に説明します。
- アクセル・ブレーキ、どちらもかかとを床につけて踏みます。
- かかとの位置はブレーキペダルの手前。
- アクセルを踏むときは、かかとを支点にして足先をアクセル側に回転させる。
ちょっとガニ股になってしまうのが難点ですが、こうすることで以下のメリットがあるうえに、踏み間違いも格段に減るかと思います。
- アクセルもブレーキも、繊細なタッチが可能。
- 足の位置が定まっているのでペダルの位置が把握しやすい。
この踏み方を身体に覚えこませ、慣れていれば、もし万が一、ペダルを踏み間違えたとしても、店舗に突入するほどアクセルを踏み切ることはありません。
なぜなら、足首を曲げていることにより、力が入りにくいですし、踏み込む量もブレーキと比べて少なくなるからです。
(アクセルはブレーキよりも奥にあり、支点のかかとから、より遠い位置にある)
アクセルとブレーキの踏み方が同じであれば、それぞれのペダルの感触が違うこともわかってくるはずです。そうなれば、踏んだ瞬間に違和感に気づくでしょう。
急ブレーキを踏まなければいけない時に注意
このペダル操作にもデメリットがあります。
かかとをつけることによって、繊細なタッチは可能ですが、超急ブレーキのような、床まで踏み切るとこは容易ではありません。
(かかとが床についていても、ABSが作動するくらいまで踏み込むことは可能ですが)
そういう場面にならないように気を付けるのが第一ですが、万が一の不測の事態では思い切り踏み切りましょう。
あとがき
アクセル・ブレーキ踏み間違い事故について再考察してみたわけですが、もし仮に原因が「運転のルーティン化」にあるのだとしたら、高齢者に限らず、誰にでも起こり得る事故です。
車の運転に慣れていればいるほど、一連の操作は無意識にできてしまいます。
その一連の流れを一瞬でも断ち切る「何か」が起こったとき、正常にルーティン処理を終わらせることができるでしょうか。
この記事が「車を動かすこと」について、もう一度見つめなおす一助となれば幸いです。
それでは、良きカーライフを。